自伝を書くにあたって

かねてより,70歳になったら,自伝を書こうと思っていた.それは,単に,70歳が一つの区切りになると考えていたからである.

区切りといえば,60歳の還暦や,65歳の定年退職の機会もあっただろう.後期高齢者と呼ばれ始める75歳という年齢もあったかも知れない.

しかしながら,60歳は,まだ現役真っただ中,65歳は,定年後に新しいことを始めようと思っていた時であったし,75歳となると,もう,その頃には,どうなっているか全く自信はない.ということで,何年か前から,70歳ということに決めていた.

このため,時折,身の回りのものや,ネットなどで,自伝に使えるものを探したり,保存してきた.そして,本格的に探し始めると,色んなものが出てきた.また,色んな思いが湧き出てきた.

ところが,このような思いは,いったんは,断ち切らなければならないと考えるようになった.それは,これから,より創造的に,生産的に,かつ,前向きに生きていくためには,そのような思いは,しばしば,それらに対するネガティブな作用となるからである.

そこで,これらの過去に対する思いを,きちんとした形でまとめ,可視化することによって,今後への糧にしたいというのが,この自伝をまとめるための大きなモチベーションとなった.すなわち,自分の過去と,一度しっかり向き合うことが,今後の飛躍になると信じた.

さて,この自伝をまとめるにあたり,自分自身の過去を振り返り,それを経年的に記述していくと,この人は,何と健気に,また,一生懸命に生きてきたのか,という思いにかられてしまった.そして,そのような自分を,愛おしくさえ思った.このため,自分のやってきたことを,正当化したい気持ちにも駆られるが,現在から見て,できるだけ客観的な立場で記述したつもりである.

以上,この自伝をまとめるにあたっての心情などを,縷々書いてきた.この自伝を読まれるにあたっての何かの参考にしていただければ幸いである.

2023年3月

 

2018年の最終講義の時にいただいた花束の一部.自室のソファに並べてもらったもの.